こんにちは!おうちで楽しむ陶器市 うちる編集局のタキです。
最近おしゃれな雑貨店やセレクトショップで見かけることが増えた波佐見焼。
雑誌やインスタグラムでも素敵なテーブルコーディネートをよく見かけます。
そんな波佐見焼人気に火をつけたのが「マルヒロ」です。
その名前は知らなくても、商品を前にすれば「見たことある!」という人も多いのではないでしょうか。
今回はそんな「マルヒロ」を徹底解説!人気シリーズもご紹介します。
波佐見焼ブームの立役者「マルヒロ」とは?
数年前まで倒産の危機
今や押しも押されぬ人気を誇る波佐見焼のメーカー「マルヒロ」。
波佐見焼を代表する会社といっても過言ではありませんが、10年ほど前までは経営の危機にあったというから驚きです。
長崎県波佐見町で作られるものを「波佐見焼」と呼ぶようになったのは2000年ごろのこと。それまでは「有田焼」の下請けのような存在として、小さな産地ながら成長を遂げてきました。
ところが「波佐見焼」として歩み始めると産地生産額は減少し、2011年ごろにはバブル期の1/4程度までになります。
そんな厳しい状況は「マルヒロ」も同じで、2008年ごろには倒産の危機を迎えていたというのです。
「中川政七商店」のコンサルを受け新ブランド(HASAMI)設立
危機的状況に当時社長の馬場幹也さん(現会長)は、波佐見を離れていた息子の匡平さん(現社長)を呼び戻すことに。
現状打破するための秘策を任せることにしたのです。その秘策とは「中川政七商店」の経営コンサルティングを受けることでした。
「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、数々の企業の経営改善を実現している「中川政七商店」からの提案は新ブランドを作ること。
そして生まれたのが、「HASAMI」なのです。
新ブランドの企画を始めたころは「中川政七商店」のテイストや、当時の流行りに添うような消極的な方向性にまとまりかけたといいます。しかし、ある社員の一言で匡平さんは一念発起。
方向性を白紙に戻し、自分が好きなもの・興味を持てるものは何なのかを考えたといいます。
たくさんのマグカップを買ってきて研究し、どんなデザインが使いやすいのか試行錯誤の末に完成した「HASAMI」は、当初のイメージとは正反対のテイストに仕上がりました。
それだけの熱量をもって作られたマグカップは今も「マルヒロ」を代表する人気商品です。
「HASAMI」が大ヒット
アメリカンヴィンテージを思わせる無骨なデザインと絶妙な色使い。
すぐに人気が出たのかと思いきや、半年ほどはさほど反応がなかったといいます。周囲からはそれまでにない色使いに厳しい声もあったそうです。
ところが展示会への出店を機にブレイク。
まず「吉田カバン」から2万個の発注があり、それを呼び水にさまざまなアパレルメーカーからお声がかかるようになりました。「HASAMI」を見出したのはファッション界だったんですね。
「HASAMI」がいかにそれまでの波佐見焼や食器の概念を超えた発想のブランドだったかがわかります。
様々なコラボも展開
その評判は海外へも届き、フォントデザイン会社「ハウスインダストリーズ」とご縁がつながったのです。
新たなブランド「ものはら」の頭文字「m」のパターンをデザインしてもらい、ドットの「m」が印象的なプレートやボウルなどが作られました。
「ものはら」とは、波佐見町の登り窯の近くで製品にできないものを捨てる場所のこと。そこには歴代の作品たちが地層のようになっているといいます。
まさに波佐見焼の歴史そのもの。伝統工芸の歴史を大切にしながら、業界を超え、国も超え、新たなチャレンジを続けながら未来を重ねていく、そんな「マルヒロ」の想いが伝わってきます。
「ハウスインダストリーズ」とは「HASAMI」シリーズでもコラボレーション。こちらは「HOUSE」と「HASAMI」の「H」がデザインされています。
コラボレーションは新たな出会いも運んできました。スケートボードのブランドとは煙管を作ったことも。
今ではコラボ相手は土壌の研究所にまで広がり、植木鉢と培養土がセットになった「POT & MANUA SET」も販売しています(植物は付いていません)。
今や波佐見焼を代表する産地問屋に
その後は評判が評判を呼び、雑誌などのメディアに取り上げられると、その知名度は確実に高まっていきました。
2017年には原宿と京都にて単独の展示・販売会となるポップアップストア&エキシビションを開催。オランダで日本の伝統工芸品などを紹介する「MONO JAPAN」に出店。オンラインストアも立ち上げています。
他にはない「マルヒロ」独自の商品づくりを続けながら、一般消費者との接点も増え、ファンも増加。
「ふるさと納税」の返礼品にも選ばれています。今では波佐見焼を代表する産地問屋のひとつといっても過言ではないでしょう。
陶器まつりでも整理券が配られるほどの人気
毎年ゴールデンウィーク期間に開催される「波佐見陶器まつり」と同時期に実施している「ガレージセール」は、整理券を配布するほどの盛況ぶり。
今年はすでにガレージセール3日目だというのに、配布開始30分で600名分が配られていました。7時ごろに受け取ると販売テントへの入場は1時間待ち。お買い得商品のワゴンの中にはすでに空のものもあるほどでした。
会場では「HASAMI」の限定カラーも販売。2018年の「ピンク」は反響が大きく、その後「オンラインストア・直営店限定カラー」として販売されるようになりました。
現在はブランドも増えて展開中
「HASAMI」シリーズをきっかけに息を吹き返した「マルヒロ」。ご紹介した「ものはら」のほか「BARBAR」というブランドも展開中です。
各ブランドの中でもテーマなどでさらに分類されるので、「マルヒロ」ファンになったばかりだと目に留まった商品が「マルヒロ」のものなのか、どのブランドに属するものなのか、わかりづらいことがあるかもしれません。
そこで、「HASAMI」と「BARBAR」について、少し詳しくご紹介しますね。
「HASAMI」シリーズとは?
シリーズの概要と魅力
「マルヒロ」復活の起爆剤となったブランド「HASAMI」。陶磁器に興味のない人たちをターゲットに作られたといいますから、畑違いのファッションブランドをきっかけに火が付いたのもうなずけます。
「道具」として日常になじみ、生活の中で使い込まれていく。そのためにはデザインはもちろん使い勝手だって大切です。
使いやすいものには自然と手が伸びる。そうして愛着も増していく。そんな姿が浮かんでくるシンプルでいて機能的なシリーズは5つのSEASONに分かれています。
SEASON 01
50~60年代のアメリカのカフェで使われていたような大衆食器をイメージ。カラフルでもどこか落ち着いた雰囲気の色合いは、釉薬の配合にこだわりぬいて生み出されています。
「マルヒロ」の代名詞とも言えるマグカップもこのシリーズです。プレートやボウルもあり、直径が同じならスタッキングも可能。
SEASON 02
メキシコをイメージしたカラーと、ひび模様が特徴的。
陶器製の植木鉢・ハニカムポット。水受けとして使えるハニカムトレイは取り皿のほか、小物入れなど、インテリアとしても楽しめます。
SEASON 03
フランスのおままごとセットのような、テーブルに並べるだけでワクワクするシリーズ。おもちゃのようなフォルムとプラスチックのような質感です。
グラタンやキッシュなど、オーブンからそのまま食卓に並べても絵になります。
SEASON 04
ドイツの産業景観をイメージした工業的なデザインのランプ。現在は廃番になっています。
SEASON 05
イギリスのパブにありそうなお酒を楽しむ食器たち。現在は廃番になっています。
SEASON 05s
「SEASON 05」同様イギリスのパブをイメージしながら、こちらは焼き物の生地に色を付けることでマットな風合いに仕上げています。
カップの淵がとても薄いので、口当たりよく、お酒を楽しむことができます。
「BARBAR」シリーズとは?
シリーズの概要と魅力
海外のテイストを盛り込んだ「HASAMI」とは対照的に、2011年から和食器ブランドとして生まれた「BARBAR」。2017年8月までは「馬場商店」というブランド名で展開していました。
「枠にとらわれず、自由でかっこよく、ワクワクするものづくりをしたい!」という想いから新しいブランド名、ロゴとともに再スタートをきった「BARBAR」は伝統を継承しながらも、新たな挑戦をし続けています。
蕎麦猪口大事典
蕎麦猪口の生まれ故郷のひとつとも言われる波佐見。
生産技法は今でも受け継がれ、波佐見焼が得意とするところです。そこへ伝統技法はもちろん、現代カルチャーも盛り込んで、バラエティー豊かなデザインが並び、その数は今や100を超えます。
「蕎麦猪口大事典ポップアップストア」は日本全国で開催されています。
いろは
江戸時代、高価だった磁器を庶民も使えるように様々な工夫を施して作られた「くらわんか碗」。
グレーがかった白磁にダイナミックな文様という特徴を再現しました。
藍駒
やや厚めで素朴な風合い、手書きの線は1本1本味があります。生地にはカンナ彫りが施されています。
縁起物
見るからに縁起のよいモチーフを使ったシリーズ。桐箱もあるので、引き出物などにもぴったりです。
おしゃれにキマるコーディネート
盛り付けるだけでなんだかおしゃれ。そんな「マルヒロ」食器はインスタグラムでも頻繁に見かけます。
公式アカウントから、素敵に楽しんでいる方までご紹介します。カラーやサイズなど、お買い物の参考にしてくださいね。
ネイビーの染付は涼も運んでくれます。波紋も思わせる「藍駒」の皿に盛り付ければ、夏の食卓に涼やかな風が吹いてきそうです。
小さなマグにはフルーツやヨーグルトなどを入れてもOK。
ワンプレートにデザートまで収めたいときは、別の器に入れることで他のお料理に水分が移るのを防ぐことができます。
伝統のくらわんか碗はそばやうどんを盛り付けるのにぴったり。
サイズ違いのプレートやマグを組み合わせれば、おしゃれな親子コーディネートが完成します。
和食器ブランドの「BARBAR」はもちろん「HASAMI」だって和食に合いますよ。
平らなプレートなら、どんな料理も好きな分量でワンプレートにまとめることができます。
そもそも波佐見焼とは?
400年以上の歴史に裏打ちされた確かな技術
「波佐見焼」として市場に並び始めたのはここ20年ほどのことですが、波佐見町の焼き物づくりは400年以上の歴史があります。
そもそも波佐見町は、隣接する有田町の「有田焼」の下請けとして、大衆の日常用食器を大量生産し発展してきました。
その用途からもわかるように、波佐見焼は丈夫で扱いやすく、比較的お手頃価格の商品が多いです。この特徴は「HASAMI」SEASON01シリーズの大衆食器というテーマにもぴったりですね。
分業制で大量生産・低コストを実現
波佐見焼は効率的に大量生産するため、型づくり、生地づくり、窯元など、分業制をとってきました。
そのため、各分野で専門性の高い技術が磨かれ続けてきたのです。ひとつの食器を作るのにはたくさんの職人さんたちが携わり、それぞれの想いが込められた商品が送り出されていきます。
その中で「マルヒロ」は産地問屋として商いをしてきました。
産地問屋は従来商品を仕入れて販売するのが主でしたが、「マルヒロ」は自社でブランドを立ち上げ、各職人さんと密に連携を取りながら新しいチャレンジを続けています。
まとめ
江戸時代にはじまり確かな技術を受け継ぎながら、庶民が使える食器を作り続けてきた波佐見焼は、その伝統を守りながら現代のエッセンスを取り入れることで息を吹き返しました。
その波佐見焼復興の先頭に立っているのが「マルヒロ」。
デザイン性の高さからファッション界の注目を集め、若い世代にも波佐見焼の認知を広げましたが、その裏には確かな技術が受け継がれていました。
だからこそ、一過性の流行りにとどまらず、今でもファンを増やし続けているのだと思います。
丈夫で手ごろで使いやすくておしゃれ。
3拍子も4拍子もそろった「マルヒロ」の食器で、美味しいだけじゃない、気分も上がる食卓を演出してみてはいかがでしょうか。
うちるでは、伝統的なものからモダンなものまで、多数の波佐見焼を取り扱っておりますので、宜しければこちらも合わせてご覧ください。
それでは、最後までご覧いただきましてありがとうございました。皆さまがよい作品と出会えますように!