心を解き放つ、自分だけの沖縄・やちむんを探して【うつわ巡りの旅vol.10】

うちる編集局スタッフが、全国各地にある素敵なうつわの生まれ故郷を訪ねる「うつわ巡りの旅」。
今回訪れたのは、豊かな自然とユニークな文化が息づく南の島・沖縄です。

秋色の海を眺めながら走るドライブの目的地は、沖縄の多彩さをギュッと凝縮したかのようなうつわを手掛ける窯元「一翠窯(いっすいがま)」。

多くの窯元が点在し「沖縄の焼き物=やちむん」の聖地と呼ばれる読谷村(よみたんそん)と、美味しいもの&美しいロケーションが楽しめる恩納村(おんなそん)で、ちょっぴりノスタルジックなドライブ旅を満喫してきました。

焼き物の聖地、沖縄・読谷へ

沖縄本島の中部に位置する読谷村は、やちむんを語るうえでは欠かすことのできない聖地であると同時に、サンセットをはじめとする有名な観光名所がいくつもある人気のエリア。

そして読谷村のお隣にある恩納村もまた、美味しいものとリゾート感いっぱいのロケーションが楽しめる県内屈指の人気エリアです。

今回の旅では、お腹を満たしてくれる美味しいものと、沖縄ならではの美しい景色を味わいながら、目的地である窯元「一翠窯」まで、のんびりドライブを楽しみます!

「一翠窯」がある読谷村の長浜までは、那覇空港から車で50分ほどです。

高速道路である「那覇空港自動車道」から「石川IC」を経由しても、一般道の国道58号線を経由しても所要時間に大きな差はありません。ただし、通勤・通学の時間帯は渋滞が起こりやすいため、朝夕に移動する場合は「那覇空港自動車道」を使うのがオススメ。

もちろん、どちらのルートを選んでも開放感バツグンの海辺を通るので、ドライブには最高です!

海が似合う、おいしいサンドイッチ

旅のスタートは、美味しいものから……ですよね!

やって来たのは、恩納村・仲泊にある「シーサイドドライブイン」。
1967年の創業当時から変わらない味とスタイルで、世代も、地域も、国も越えて、今なお多くの人たちから愛され続けている老舗のレストランです。

シーサイドドライブインには、気軽に立ち寄れるテイクアウトカウンターもありますが、この日はゆっくり休憩できる店内(ホール)へ。

レトロでアメリカンな雰囲気と、窓の向こうに広がる青い海が、時間も場所も混ざり合うような心地よい気分にさせてくれます。

オーダーは、シーサイドドライブインの看板メニュー「シーサイドサンド」と「スープ」に決めました。

具だくさんのサンドイッチ&スープは、どちらもシンプルなのに個性的、でも何故か懐かしい味わいの逸品。
……美味しくて食べる手が止まりません!

こちらの2品、実は「一翠窯」代表の高畑さんがオススメしてくれたもの。

ここシーサイドドライブインは、高畑さんが陶芸の修業時代にもよく立ち寄っていた場所で、お店の独特な雰囲気がインスピレーションを刺激することもあるそうです。

美味しいゴハンと穏やかに流れる空気に、お腹も心も満たされました。

気が付けば、すっかりシーサイドドライブインのファンに。
思わずレジ横にあったステッカーをお土産に買ってしまいました。

次に来たときは、別のメニューも食べてみよう!

【シーサイドドライブイン】
<アクセス>
石川IC出口から県道78号を経由し、車で約5分。
<店舗紹介>
住所:沖縄県恩納村仲泊885
TEL:098-964-2272
店舗HP:http://www.seaside-drivein.com/ 
※2021年10月現在、定休日・営業時間が変更されています。最新の情報は店舗HPをご確認ください。

扉の向こうは別世界。一翠窯へ到着

シーサイドドライブインから、海沿いの「おんなサンセット海道」を車で走ること約15分。
本日の目的地「一翠窯」に到着です。

海沿いの道から少し入った、静かな住宅地にたたずむ「一翠窯」。
隣接するギャラリーの扉を開けると、色とりどりのカラフルやちむんたちが出迎えてくれました。

扉を開けると、そこは別世界。

まるで沖縄にある色という色が、この場所に集まっているかのような鮮やかさに、一瞬で心が奪われます。
その存在感たるや。

『どんなお料理を盛りつけようか?』と語りかけてくるようです。
控えめに言っても、素敵すぎます……っ!

ずらりと並ぶやちむんたちに見入っていると、工房から「一翠窯」代表の高畑伸也さん(以下:高畑さん)がいらっしゃいました。

朗らかな笑顔で出迎えてくれた、頼もしい体躯の高畑さん。
力強くも優しい温かさのある印象は、目の前に並ぶ「一翠窯」の作風と重なります。

少しずつ蓄積された独特の世界観

「一翠窯」のうつわたちが持つ世界観は、数ある沖縄やちむんの窯元の中でも、かなりユニークです。

きっと、ものすごい“こだわり”から「一翠窯」はスタートしているに違いない!
そう思い高畑さんに質問したところ

「転機になったのは、世界を旅する中で訪れた沖縄でたまたま目にした“やちむん見習い募集”の張り紙なんです。最初は『面白そうだから、ちょっとやってみようかな』っていう好奇心から飛び込みました(笑)。」

という意外過ぎる答えが。

”もう明日にでも帰ろう”と考えたことがあるほど、見習いの生活は厳しかったと話してくれた高畑さん。

それでもここまで来たのは、苦しさの中にも、もの作りの楽しさ、うつわ作りの楽しさ、やちむん作りの楽しさがあったからこそ。

日々の色々な物事からもインスピレーションを受けているという作品の根底には「作品を生み出すのは、それまでの自分のすべて。自分がしてきたことの結果」という想いがあるそうです。

「最近できたデザインでも、実は10年以上前から持っていたイメージだったということが良くあります。何年も見つからなかった最後のピースが、積み重ねてきたものによって形になってパチッとはまる時があるんです」

カラフルでポップなやちむんにも、シンプルで力強い焼締にも、「一翠窯」のうつわたちにどこかノスタルジックな時間の流れを感じるのは、高畑さんが堅実に積み上げてきた想いが込められているからなのかもしれません。

一翠窯の工房を見学

興味深いお話を聞いたあとは、工房の中も特別に見学させてもらいました。(※通常は制作現場の見学はできませんのでご了承ください)

まず目に入ったのは、土練機の前に鎮座する土の山。

現在は機械で土を練ることがほとんどですが、その昔は人の足で踏んで土を練っていたのだそう。高畑さんが師事していた金城敏男氏は、人間国宝である金城次郎氏の長男ですが、次郎氏のお父さんは沖縄の言葉で”ンチャクナサー”と呼ばれる土作りの職人だったそうです。

この素朴な土の塊から、あの色鮮やかなうつわが生まれると思うと、何だか感慨深いものがあります。

こちらは土を伸ばし、角皿などの型を取るための機械。

こちらは白化粧を施した状態のうつわ。

白化粧とは、簡単に言うと白土を泥にしてうつわをコーティングする技法のことです。
もともとは採取できる量や場所が限られる貴重な白土を、効果的に使うために生み出されました。

白土の色合いや質感の違いで、仕上がりの風合いが全く異なってしまう繊細な工程。
しかし残念なことに、現在の沖縄では開発などが原因で、きれいな白土の採取量がどんどん減っているそうです。

こちらは素焼き&釉掛けが終わり、窯詰めを待っているうつわたち。
今回は、窯詰め準備の様子も少しだけ見学させてもらいましたよ。

窯に向かう高畑さんの背中が、格好いいです!

現在「一翠窯」には、素焼き用と本焼き用の窯2台がありました。
窯のそばはスゴイ熱気です!

最後に、やちむんの伝統的な釉薬づくりも見学。
工房の裏手には、釉薬の入った容器がズラリと並んでいました。

籾殻を燃やして作る釉薬は、沖縄のやちむん作りに欠かせないもののひとつ。
このとき作っていた釉薬は透明釉と言って、素地の色合いを活かしながら、ツヤツヤとした光沢のある仕上がりになるのが特徴です。

白化粧を施したうつわに、この透明釉が釉掛けされると、私たちの良く知るやちむんの仕上がりに。

貴重な制作風景をたくさん見せていただき大満足。
ありがとうございました!

クリエイトのその先に

工房を案内しながら、制作工程の全てが楽しいと笑っていた高畑さん。
特に土と無心に向き合う時間は大切なのだとか。

「土は生き物がそこで生きていく基礎となる場所。だからかな、土を触ると落ちつくんですよね」

そう少し照れくさそうに話してくれる高畑さんの実直さが、とても印象的でした。

「自分はまだまだスタートラインに立ったばかりだから、最初のころの必死だった気持ちを忘れちゃいけないなぁといつも思っているんです。それと同時に、僕はクリエイトすることにこそ価値があると考えているから、良い方向にずっと変わっていきたいとも思っています。」

「作品の可能性を閉ざすことなく、これからも挑戦していきたいんです」

最後にそう話してくれた高畑さんの頭の中には、常に新しい作品へのイメージがあるそう。

新しいものを生み出すことに真っ直ぐな高畑さんと、職人さんたちの確かな技術が作り上げる「一翠窯」のうつわたち。

だからこそ、使う側の私たちもイメージも刺激されて、「一翠窯」のうつわを食卓に並べるのが楽しくなるのかもしれません。

再訪が待ち遠しい旅になりました

「一翠窯」を出発し、車で10分ほどの場所にある「残波岬」からのサンセットを眺めながら、今回の旅はおしまいです。

やちむんの聖地・読谷で出会ったうつわと、その制作に携わる人たちは、沖縄の美しい自然と同じくらいキラキラとしていました。
次に訪れるときには、どんなうつわが出迎えてくれるのか……今から楽しみです!

今回お邪魔した「一翠窯」のうつわは、こちらからもご覧いただけます。

一翠窯 一覧ページ

お気に入りのうつわで、毎日の食卓を楽しめますように。

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