全国のうつわを巡る旅。今回訪れたのは、佐賀県有田町です。
有田焼は磁器としてとても有名ですが、町自体はとてもコンパクトで自然豊かな場所でした。
江戸時代からの歴史ある陶磁器の文化に触れたり、窯元で絵付けなどを見学したりと、とても好奇心が揺さぶられる楽しい旅となりました。
この記事を読んで少しでも旅気分を感じてもらえたらうれしく思います。
目次
有田と伊万里の旅
今回は佐賀県の有田町と伊万里市の2ヵ所を旅します。
有田への行き方
車でいく場合…福岡から高速で1時間20分 波佐見有田ICで降りて5分
電車の場合…博多駅から特急で1時間20分。有田駅下車。
町内は観光客用の駐車場も充実しており、車でも観光しやすい場所です。
レンタサイクルもあり、比較的コンパクトな町なので自転車でも周遊できます。
伊万里は有田から車で20分ほどの距離なので、せっかくなら足を延ばしてみてくださいね。
旅のプランは次の通り。
旅プラン | |
午前 | 西富陶磁器のギャラリー |
有田の町を散歩(トンバイ塀) | |
窯元巡り(渓山窯・喜鶴製陶) | |
有田焼の歴史巡り(磁石場・陶山神社) | |
ランチ | 龍泉荘 奥の院 喫茶 木もれ陽 |
おやつ | 九州陶磁文化館 |
午後 | 伊万里に移動 |
徳七窯 | |
”秘窯の里”大川内山 |
西富陶磁器のギャラリーへ
今回の旅は有田の西富陶磁器の西山さんが同行してくださいました。
西富陶磁器は有田のやきものの卸会社。
有田焼を中心に様々なうつわを取り扱っています。
最近ではインスタグラムでおいしそうな料理と一緒にうつわを毎日紹介しています。
オリジナル商品も多数手掛けています。
40代くらいの年齢層の心をわしづかみにしたのが、キン肉マンの箸置き。
キン肉マンを通して、有田焼の特徴や技術を伝えられるよう、全て手描きで描かれています。
SNSで話題になりイベントの際にデパートに走った親子もいたそうです。
こちらのM′s呉服のシリーズも人気です。
M’s呉服シリーズはいろいろな窯元や作家さんに絵付けをしてもらっています。
窯元ごとに保有する「絵柄」や「技法」があり、それをこの着物柄に表現しています。
かわいらしいポップなものから伝統的な絵柄のものなど、一つ一つ個性があり趣も違います。
買い揃えたくなりますね。
これらをプロデュースしているのが、今回旅に同行してくれた西山美春さん。
山形出身で結婚するまでは東京で陶磁器の卸会社に勤めていたそうです。
有田出身のご主人と東京で出会い結婚。
その後、ご主人の実家に戻りご両親とともに西富陶磁器を営んでいます。
有田焼の良さや特徴を活かし、手書きや手作業にこだわったうつわの企画を心がけているそうです。
インターン生の受け入れも行っていて新しい世代の育成も頑張られています。
伝統ある町の中で新しいことにも挑戦されていて、「有田焼をもっとたくさんの人に楽しんでもらいたい」という思いがあふれている方でした。
有田へ
西山さんの運転で有田をぐるりと観光しました。
雨に降られたり、暑かったりと、なかなかの珍道中でしたが、陶器市とはまた違った雰囲気の静かな有田の町を楽しめました。
トンバイ塀と古民家の町並み
有田町の中心部にある観光協会でいろいろ教えてもらったあと、トンバイ塀のある通りを散策しました。
トンバイ塀とは登り窯を築くために用いられた耐火レンガ(トンバイ)の廃材を赤土で塗り固め作られたものです。
焼き物の町有田ならではの塀ですね。
なかには200年以上前の江戸時代に作られたものもあります。
赤茶色のレンガがモザイク模様のようで、中央アジアのような風情を醸し出していますね。
よく見ると釉薬がはねて溶けたようについています。
トンバイ塀も江戸時代からのものですが、有田は戦時中大きな空襲がなかったので、昔の建物が多く残されています。
明治時代、さらには江戸時代からの建物もあります。
古い建物には「歴史的建造物」と焼き物の標識がつけられていました。
このような古民家をリノベーションした、古道具屋さん兼カフェのFountain Mountainを訪れました。
古道具がおしゃれにディスプレイされています。
お店から見える中庭が美しい……。ほっと一息できます。
渓山窯と喜鶴製陶所へ
町を散歩した後は渓山窯へ。
渓山窯は一般見学や絵付け体験も可能です(要予約)。
細い筆先で綺麗にダミをいれていったり、赤い染料で上絵付をされたりしていました。
ちょうど窯入れの準備をされていました。
均一に火が入るようにうつわが並べられ、一段ずつ慎重に重ねていきます。
工場の近くのギャラリーにもお邪魔しました。
渓山窯はそば猪口が人気とのこと。
いろいろな柄が並んでいてかわいいですね。
絵付けも細かいです。
くじらの箸置きもかわいいです。
次に喜鶴製陶へ。
量産型の圧力鋳込みが多い中で、喜鶴製陶のうつわは一つ一つ手で型をとる「たたら成形」をしています。
たたらの良さは手作りの温かみを感じられるところ。
鋳型でカッチリ型を取らないので多少の厚みの違いなども出てきます。
高台がないので、コロンとしたフォルムがかわいらしいですね。
喜鶴製陶の山口さんに実際にたたら成形で作るようすや絵付けをみせていただきました。
「うちる」で販売しているお皿もこうやって一つ一つ手作業で作られています。
日本磁器誕生の地「磁石場」と「陶山神社」へ
次に、泉山磁石場に行きました。
ここは17世紀初頭、朝鮮人の陶工「李参平」によって陶石が発見された場所です。
磁器を作るための良質な陶石がここ泉山で見つかったことから、有田で日本初の磁器のうつわが作られ始めました。
山一つなくなるほど掘った後が広がっています。
ここにあった陶石全部をうつわに変えたら、どれだけの数になるのでしょう……。
日本の磁器の歴史はここから始まったと思うとロマンを感じますね。
次は陶山神社へ。
有田で磁器を発見し、磁器を広めた陶工「李参平」を祀っている神社です。
鳥居がなんと磁器でできてます。
太陽の光に照らされてまぶしい!
焼き物のお守りや絵馬、陶板の御朱印帳などもありました。
なんと、神社の中に線路が!
通りすがりに電車の中で手を合わせられるかもしれませんね(無作法ですね)。
龍泉荘でランチ
山を登った川沿いにある「龍泉荘 奥の院 喫茶 木もれ陽」へ行きました。
吹き抜けの店内はガラス張りになっていて、涼しげな川の流れや木々の深緑をぜいたくに楽しめます。
一幅の名画のようですね~。美しい景色に癒やされながら佐賀牛のフォカッチャサンドをいただきました。
お肉が柔らかくて味わいもよく大満足でした。
景色がいいとさらに美味しく感じますね。
九州陶磁文化館
次は有田焼の歴史を学びに九州陶磁文化館へ。
肥前地域で作られた陶磁器をはじめ、九州各地の陶磁器や現代作家の作品が展示されています。
こちらは江戸時代の箱膳を再現したもの。
お皿の柄がキッチュすぎる!お侍さん、こんなお皿で食べてたの!?と突っ込みたくなりました。
有田町にはほかにも歴史的な建物を利用した美術館や博物館がたくさんあります。
一日では回りつくせないほどです。
じっくりと器を鑑賞したあとは館内のカフェテラスでお茶の時間。
佐賀のスイーツ「ごどうふ」を楽しみました。
器もすべて有田焼。
帰りにトイレに入りましたが……。
ここも磁器!有田はどこもかしこも磁器だらけでした。
伊万里へ
有田を後にして次は隣の伊万里市へ出発。
途中有田から伊万里にかけて大きな川が流れています。
かつてはこの川を下って有田焼を伊万里港まで船に乗せて運んだそうです。
そこから平戸にわたりヨーロッパへ器が輸出されました。
伊万里の橋に行くと、オランダ貿易を彷彿とさせる陶板と焼き物の人形が飾られていました。
そして豪華な壺も。
ヨーロッパの貴族は金を装飾するために焼き物を利用したそうです。
徳七窯
市内の窯元、徳七窯を訪れました。木瓜皿の絵付けをみせていただきました。
あっという間に絵柄が生まれてきます。
動画でも話をされていますが、かっちりと決まった絵柄というわけではなく、バランスを見て「筆の動くままに」描いているとのこと。
それが素人にはできない技ですよね。
秘窯の里「大川内山」へ
大内山は17世紀から19世紀にかけて、佐賀藩(鍋島藩)の藩直営のやきものを作っていた地域です。
藩主の所用品や将軍家の諸大名のへの贈答品などの高級品を作っていたので、関所を設け関係者以外は立ち入り禁止としていました。
こういったことから「秘窯の里」と呼ばれています。
これらのやきものを近代以降「鍋島焼」と読んでいます。
山の奥にあるので自然豊かで気持ちの良い場所です。
里のわきには川が流れており、石畳も苔むしていて風情を感じます。
ちょうど「伊万里風鈴まつり」の期間中で、軒先に並ぶ風鈴が涼しげな音を立てていました。
最後は伊万里の市街地に下りてお土産のお菓子を買い、伊万里産のブルーベリーを使ったジェラートをいただいてきました。
おわりに
有田と伊万里で磁器に触れるたびに、西山さんの話を聞くほどに、どんどん有田焼の絵付けの魅力に引き込まれました。
現代では転写やパット印刷など量産しやすい生産方法もありますが、有田では手作り、手描きの技術を絶やさないように継承をしていることを知りました。
人の手で描かれた絵には温かみがありますね。
有田の絵付けのうつわは、食卓できっと柔らかい雰囲気をつくってくれるのではないかなと感じました。
また素敵なうつわに出会いに訪れてみようと思います。
今回ご紹介したうつわは、こちらからご覧いただけます。
お気に入りのうつわで、毎日の食卓を楽しめますように。